コラム

削るべきは事業でなく機能(なぜiPhoneは強いか?)

はじめに

2014年2月、ソニーがパソコン事業を手放しました。ソニーがソニーらしさを追求し、確立してきたブランドVAIO。こだわりがある方にとっては、衝撃的な出来事だったに違いありません。他にも、日本製スマホの相次ぐ撤退、WiiUの不振等、かつて日本が得意としてきたエレクトロニクス領域は、いまや過去の栄光を失ってしまったと言わざるを得ません。本記事は、エレクトロニクス産業の今後を思い、削るべきは事業ではなく機能ということについてお話します。

思い切って機能を削れば、グンとよくなる日本製品

日本は顧客の目が肥えた市場です。そのため、顧客のニーズやウォンツに訴えかけるため、いろいろな機能を何でもかんでも入れ込んでしまう傾向があります。テレビリモコンのボタンの数が、この傾向を物語っています。その結果、ユーザーにとっては、商品の特徴がわかりづらくなり、結局のところ、購入につながらなくなってしまいます。最近、最も購入が難しい商品はパソコンでしょう。見た目はほぼ同じで、中身が微妙に違い、CPUやらメモリやらの数値とにらめっこしながらどのパソコンがいいのか悩む方も多いと思います。「とりあえずこれならOK」というわかりやすさが、今、最も消費者が期待していることです。iPhoneやiPadに代表されるApple製品はこの辺りを訴求した商品ラインナップの作り方がうまいです。ユーザーにわかりやすい商品にするために、思い切って機能を削れば、日本製品はグンとよくなります。

機能はソフトウェアに。ユーザーが選ぶ時代。

商品の購入につなげるためには、余計な機能を排除したわかりやすさが必要です。一方で、購入後にユーザーを製品や会社のファンにしていくためには、細かいところまで手が届いた機能が必要です。つまり、ユーザーは商品購入後、その商品を利用していく過程で成長する側面をもっているということです。しかし、最初から高級機能を搭載すると先に書いたとおり、特徴がわかりづらくなります。なので、気の利いた機能は全てソフトウェアにして、ユーザーが選ぶ仕組みを導入するべきです。ソフトウェア化は、スマホやパソコン等に限った話ではありません。例えば、自動車もソフトウェアの時代です。トヨタ自動車ですら、今や自社製の自動車をタイヤのついたiPhoneと形容しています。ユーザーが製品と共に成長することを見越し、敢えて未完成のままの状態で販売するのです。もちろん、収益が継続化されるメリットも生まれます。

顧客至上主義ではなく、顧客中心主義。

顧客は大切ですが、顧客の要望を全て商品に丸め込んでしまうと、全くもって不細工な商品になってしまいます。重要なことは顧客至上主義ではなく、顧客中心主義です。つまり、顧客の要望を表層と捉えるなら、顧客心理の深層に焦点を当てるのが、顧客中心主義です。顧客至上主義に翻弄されると、全体最適を得ることができません。本質は何なのか、見極めることが重要です。特にライフサイクルの短い商品を扱うとき、戦略は顧客至上主義に陥りやすいですが、やはり最後に残るのは、顧客中心主義を実現した商品です。iPhoneやiPadは、例えば、カメラで撮った画像の名前を編集することができません。しかし、iPhoneやiPadを選ぶユーザーは非常に多いです。iPadやiPhoneは、顧客至上主義に陥らず、顧客中心主義で成功した事例とも考えることができます。

まとめ

少し機能を削れば売れるのにも関わらず、販売不振が続いて事業を撤退してしまうケースが最近増えてきているように感じます。事業を削る前に、機能を削るほうが、原価も抑えられメリットもあると筆者は感じます。事業を撤退する前に、顧客中心主義の視点から、機能を削減すれば事態が改善するか、再考して頂ければと思います。

削るべきは事業でなく機能
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コンサル白書
現役の経営コンサルタント(中小企業診断士)として2010年に独立しました。診断士試験は、独学でE判定から1週間で合格しました。
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