はじめに
「目標を設定して行動を管理する。」成功者の哲学本や人事評価制度などでよくあるノウハウですが、この行動が業績に効果をもたらす場合と、もたらさない場合があります。それはこの行動を実施する人間が、理念型かビジョン型に由来します。ここでは、理念型とビジョン型の違いについてお話します。
エピソード
理念型とビジョン型に関する、ちょっとしたエピソードを紹介します。
ある日本人の小学生まさおくんが両親の奨めで、アメリカのサマーキャンプに参加することになりました。そして、サマーキャンプ初日、インストラクターの方がまさおくんにこのような質問をしました。
「マサオは、このキャンプで何を達成しようとしているのかい?」
まさおくんはポカーンとするしかありませんでした。一方、他のアメリカ人の小学生たちは次々と自分の思いを答えていくのでした。まさおくんは困って泣いてしまいました。
さて、まさおくんとアメリカ人小学生の違い、わかったでしょうか?
誰もまさおくんを責めてはいけない。
ここで、理念型とビジョン型に話を戻していきます。この事例では、アメリカ人小学生は「ビジョン型」の人間ということになります。やりたいことが明確に決まっているからです。一方、まさおくんは「理念型」の人間です。両親の奨めに同意したわけですから、まさおくんなりの理念は持っているはずです。ただ、ここで注意したいのは、ビジョン型の人間が当たり前の風潮の中で、理念型の人間は受動的だと勘違いされることがあることです。まさおくんは、そもそも目標を立てられるだけの情報を持っていなかっただけです。まさおくんを責めてはいけないのです。
理念型とビジョン型
思いが行動の動機になるタイプを理念型、目標が行動の動機になるタイプをビジョン型と言います。もちろん、理念型とビジョン型に優劣はありません。また、理念型の人がビジョン型の人のように、目標を立てて行動しようとすると失敗します。同様に、ビジョン型の人が理念型の人を見習って、思いで突っ走ってしまっても失敗します。また、会社という組織では、人事評価の正当性を求められるため、どうしても目標管理という手法を用いることになります。そうなると、必然的にビジョン型が理念型よりもシステムに適合するため、評価も高くなります。故に、ビジョン型>理念型という風潮が生まれ、成功には目標を立てて行動する活動が奨励されるようになるわけです。
ビジョン型のリスク
ビジョン型の方が、目標を立てて行動することは割とうまくいくケースが多いですが、ここにはある前提が必要です。それは外乱がないことです。目標はある程度の見通しが立てられないと、精度よく定めることはできません。激変する環境下では目標を立てても、目標が意味をなさないケースがしばしばあるからです。目標管理制度があっても機能しない企業が多いのも事実です。
理念型のリスク
理念型の方は、目標がはっきりしないため、流される傾向があります。そのため気がつけば、キャリアがめちゃくちゃになっているケースもあります。そうなると、専門性が醸成されず、自分に自信がなくなり、会社に依存するか、転職してもうまくいかないケースに見舞われることになります。また、革新的な動きはできず、改善的な動きに努めてしまう傾向があります。
まとめ
コンサルティングでは、企業や人材が理念型なのかビジョン型なのか見極める必要があります。組織内メンバーの自発性を生み出す為に、目標管理制度の導入は必ずしも正しい選択になるとは限りません。安易なコンサルティングを避けるためにも、理念型とビジョン型の違いを理解しておきたいです。