はじめに
企業における教育でOJTというものがあります。実地を通じて教育を行う方法論ですが、何でもかんでもOJTという言葉に甘えてしまい、教育がおざなりになっている企業もあります。ここでは、基本的な教育のプロセス「見て、真似て、学んで、最後に創り出す。」ということについてお話します。
考えさせるばかりの教育もよくない
日本の学校教育が知識偏重型であることは、誰もが経験してきたことと思います。そのため、答えがない問題に立ち向かう強さが求められる企業において、このギャップを埋めることが必要だと考えることはごく自然なことです。しかし、考えること、すなわち知恵偏重型教育も、これはこれで問題があります。何が問題かといえば、それは時間がかかることです。企業は営利企業ですので、時間をかけることは、コスト面でマイナスです。確かに、自力で考えることは大切ですが、何も最初からそのような環境に、新人を送り込む必要はありません。大切なのは順番です。まずは、きちんと知識として全体観を教え、その上で知恵を鍛え上げていくことがポイントです。
見て、真似て、学んで、最後に創り出す。
では、教育はどのように進めるのが、最も効果的でしょうか?それは「見て、真似て、学んで、最後に創り出す」という順番です。
見る
「実態を見ないまま何かを学ぶこと」と、「実態を見た後に何かを学ぶこと」とは大きな違いがあります。もちろん、実態を見た後に何かを学ぶことのほうが効果的です。中には、実態が見れない場合もあると思いますが、その際も、ビデオや仮想環境によって、擬似的にでも見たほうが効果的です。
真似る
実態を見た後、見ただけでなく、行動を模倣してみることが重要です。見ただけでは簡単に見えても、実際にやってみるとできないことは多々あります。真似てみることで、そういったことが徐々にわかってきます。
学ぶ
行動を真似た後、その振る舞いの理由を考えることが学ぶことです。一つ一つの振る舞いには意味があります。その意味に気がつくことで、単なる真似事が学びに変わります。腹落ちする感覚を得ることが、学ぶ際の目標になります。
創り出す
物事を一通り学んだら、最後にオリジナリティを加えて、アウトプットを出していきます。物事の意味がわかって初めてできる作業です。答えのない問題に対して、解を出していくためには、知識をうまく組み合わせて、オリジナルのものを創り出すプロセスが発生します。まさに知恵の使い所です。
企業のOJTにおける問題
企業がOJTという言葉で誤魔化しがちな部分は「学ぶ」というプロセスです。「見る」と「真似る」まではいいのですが、「学ぶ」というプロセスが抜け落ちるがために、何が重要なのかわからないままになってしまうのです。なので「創り出す」というプロセスまで到達できない、指示待ち人間・マニュアル人間が生まれてきてしまいます。
「これ読んでいて。」の危険性
もう一つ、資料を渡して、教育を怠るケースもあります。これは、「見る」「真似る」「学ぶ」のプロセスを飛ばして、いきなり「創り出す」というプロセスに入ることを意味します。はっきり書いてしまえば、このパターンは論外です。時間がかかりすぎて、コストの無駄です。教育において「これ読んでいて。」は「学ぶ」のプロセスに入ってからでなければ効果がありません。
まとめ
教育は「見て、真似て、学んで、最後に創り出す。」というプロセスを如何に踏襲するかにかかっています。このプロセスを無視した教育は、必ず無駄が発生します。教育に関わる際は、このプロセスをぜひ大切にしましょう。