はじめに
中小企業診断士と社会保険労務士の試験を受けた者として、どちらの試験が難しいかについてお話します。結論を書きますと、個人的には中小企業診断士のほうが難しいと思います。しかし、考え方や感じ方によっては、社会保険労務士のほうが難しいと感じる方もいるとも思います。ここでは、様々な視点から、中小企業診断士と社会保険労務士の試験の難しさを比較していきます。
社会保険労務士は深く狭く。中小企業診断士は浅く広く。
社会保険労務士の参考書の中には、学習の範囲が広いと言及されているものも存在します。しかし、一度でも中小企業診断士の学習をしたことがある人がこの一節を読んだとしたら、口を揃えてこういうでしょう。「それは違う。」と。
社会保険労務士試験は、確かにたくさんの勉強量が必要ですが、学習領域は、労務と社会保険に関する法律と社会動向に限定されます。一方、中小企業診断士は、人事労務だけではなく、会社関係の法律、マーケティング、情報システム等、会社に関わること全般に渡ります。社会保険労務士は、ある程度法律を読み解くコツをいろいろな科目に応用することができますが、中小企業診断士の場合、会計のコツを経済学に応用するようなことはできません。
社会保険労務士は努力すれば受かる。中小企業診断士は運がないと受からない。
社会保険労務士は、社会保険と労務に関する法律と社会的動向が頭に入っていれば必ず受かります。一方、中小企業診断士は、合格レベルの知識がきちんと身についていても、二次試験において運の要素があり、受かるかどうかはわかりません。ちなみに一次試験は努力量です。
中小企業診断士の二次試験に合格するために、私生活を犠牲にして1年間集中して学習するサークルの方の話を聞いたことがあるのですが、そこまでやっても合格率は60%です。また、ある受験予備校で非常に人気のある講師の講義受講者でも合格率は40%です。実質、中小企業診断士の二次試験は運の要素が半分くらいあります。その点、社会保険労務士はそこまで学習すれば、満点に近い点数を取ることができるでしょう。少なくとも合格はできるはずです。
社会保険労務士は知らなければ解けない。中小企業診断士は推測でわかる。
社会保険労務士は、法律知識を元にした間違い探しや条文の空欄補充等、正確に法律を覚えていく必要があります。一方、中小企業診断士は、基幹となる知識は正確性が必要ですが、それ以外は確からしいものを推定していきますので、割と推測で解ける設問が多いです。なので、覚えるべき知識としては、社会保険労務士のほうが質を高めなければならず、勘の使い所が少ない分、中小企業診断士より難しいです。
まとめ
社会保険労務士試験は、正確な知識を応用する試験です。一方、中小企業診断士試験は、推定して妥当な回答を導く試験です。向き・不向きだけでいいますと、社会保険労務士は、コツコツ努力することが得意な方が向いています。中小企業診断士は、理詰めと勝負ができる方が向いています。(※本記事は中小企業診断士と社会保険労務士がどちらが優秀なのかといったことを言及する意図は全くございません。)