はじめに
資格を取ろうと思い立っても、果たして自分のキャリアに役立つのか不安になることがあります。実際問題、弁護士資格を取っても、職にあふれてしまう社会ですので、不安を持つことは、ごく自然なことです。ですが、このような不安感を抱くのには理由があります。ここでは、せっかくの資格取得が無駄にならないように、使える資格・使う資格という観点から資格の活かし方についてお話していきます。
ありきたりの前提に縛られない
「この資格を取得しても食べていくことができない。」ですとか「就職・転職にまるで役に立たない。」という声を聴くことがあります。しかし、筆者の視点からすれば、夜景鑑賞士検定のように趣味的なものは別ですが、数カ月や数年単位で苦労して取得するような資格、例えば、行政書士、社会保険労務士、中小企業診断士のような資格であれば、全く悲観的になる必要はありません。そして、悲観的に考える人は資格に対する考え方に大きな問題があります。それは、「使うもの」と考えるべき資格を「使えるもの」と考えていることです。
資格で食べられない人の特徴
資格で食べていくことのできない人は、自分を悲劇の主人公のように考え、その自虐性に一種の快感を覚える人が多いように思います。そして、「結局は営業力。」「仕事ができれば資格は関係ない。」など、口をそろえて、資格が何の役にも立たないことを悟ったかのような、極めて浅はかな結論を出します。これは、非常に残念なことです。このような方たちは、資格を「使えるもの」だと捉えているため、なんのアイデアも見出せず、行動を起こすこともしません。宝の持ち腐れとはまさにこの事だと筆者は思います。
資格は「使うもの」
資格は「仕事を行ううえで必要な技能を持ってますよ。」という証明です。難関試験へ挑戦が必要なわけですから、仕事に対するモチベーションも高いはずです。ですが、なぜそんな人材が仕事から溢れてしまうのでしょうか?それは、資格をどこで使うのかという分析が、全くなされていないためです。例えば、ベテラン社労士さんが飽和している市場に入り、新人が仕事を奪ってくることは難しいものです。しかし、ここで視点を変え、ベテラン社労士さんが欲しがる武器を作って、仲間に引き入れてもらえるように努力すれば話は変わってきます。これは必要とされるターゲットを変えることに、資格を使った例です。資格をどこで使うのかということを考えれば、市場はかなりの広がりを見せます。資格で食べていけない人は、小さく、飽和している市場で生きていくことばかり考えていて、営業力や仕事の質などの資格以外の能力に答えを見出そうとするので浅はかなのです。
資格を「使うもの」にするための問題
問題
中小企業には税金を納める義務がありますが、個人事業の青色申告と違い、法人では複雑な税務処理が発生します。この部分は税理士さんの力が必要で、一般的に誰かが受注することができます。では、もしあなたが税理士さんだとして、更に業務に必要な能力が備わっていた場合、どのようにすればこの中小企業から案件をとることができるでしょうか?
答えのヒント
「できない税理士さん」は、きちんと事務手続きをして終わります。「できる税理士さん」は、事務手続き+節税対策をします。ライバルは「できる税理士さん」ですので、「事務手続き+節税対策+α」が答えなのですが、αは一体何なのかというところがミソです。もちろん、このαは、企業経営者が欲しいものでなければなりません。この案件が仮に20万円だったとすると、αに20万円以上の価値があれば、ライバルに勝つことができます。なぜなら、仮にライバルに「事務手続き+節税対策」の部分を持っていかれても、αに20万円以上の価値があれば、普通ならそれだけで20万円出して買おうと考えるからです。仮に、ライバルが経営者と仲の良い税理士さんだったとしても、入り込む余地を作ることができます。一度入り込めれば、本業の「事務手続き+節税対策」でライバルと勝負ができますし、状況次第では案件をまるまる奪うことも可能になってきます。すべてはこのα次第ですが、あなたなら、どのように考えますか?考えるためには資格の知識が必須です。なぜなら、同業者がどのようなサービスを提供しているかを考えるために、資格のテリトリーを把握する必要があるからです。
まとめ
正攻法で、士資格を取って事務所へ就職することや、法律で定められた範囲内の業務を行うことは、今の時代においては狭き門です。これは、法律と社会ニーズのギャップが大きいため、どうしても起こってしまう現象だということを認識しなければなりません。であるならば、社会ニーズにターゲットを定め、資格をうまく使っていく方が賢明です。そして、そのほうが自由で清々しいです。資格は使うものという意識であれば、自然と道は切り開けるときが来ます。ぜひ、臆することなく資格に挑戦して頂ければと思います。