知識

人材と人財の違い

はじめに

「人材」に「人財」という言葉が充てられること、最近目にすることありませんか?これは、人を「材料」ではなく「財産」として考えようとする動きによるものです。ここでは「人材」と「人財」の違いについて、言及していきます。

会社は人

「人材」と「人財」の違いが生まれる背景には、会社は人の力で動いているという事実があります。企業に勤めていると、自分がまるで大きな会社の小さな歯車であるような感覚を持つことがあります。実際、一人の従業員がいなくなったとしても、会社の運営上困らないケースがほとんどで、この感覚は、ある種正しいものと言えます。しかし、このような環境では、人としての存在価値が軽薄になり、従業員モチベーション低下につながることは言うまでもありません。そこで会社側から、「あなたは『材料』ではなく『財産』ですよ。」というメッセージを、「人財」という一言に載せて発信することで、従業員を大切にする姿勢を伝えようとしているわけです。

口先だけのメッセージになっていないか?

一方で、気をつけないといけないのは、従業員側への伝わり方です。何の施策もなく、ただ「人財」という言葉だけが独り歩きしては、単なる偽善にしか過ぎません。流行りの言葉を意味もなく利用するような人事部は誰も信用しないからです。「人財」という言葉を用いるためには、「人材」と「人財」の使い分けが必要になる理由や、「人財」として従業員を大切にする制度が、会社の中にしっかりと存在していないといけないからです。

「人材」はそもそも悪い意味ではない。

もう一つ、意識しないといけないのは、「人材」の「材」という文字は決して悪い意味ではないことです。漢和辞典で調べると、「材」という文字は、「材料」という意味の他に「役に立つ才能・素養」という意味もあります。「人材」という言葉には「運営に必要な才能や素養を持った人」という意味があり、会社からの期待が十分に込められています。また、筆者自身、材料工学を学んだ経験からすれば、材料はこれから大化けする可能性そのものでした。確かに、材料工学科はマテリアルなんと科と呼称が変わる傾向も事実としてありますが、本質としての「材」あるいは「材料」に悪い意味は含有されていません。

「人材」と「人財」の違いは取扱いの意識差

結局のところ、「人材」と「人財」の違いは、取扱いに対する意識の差です。「材料」は加工して、製品や商品に仕上げていきます。一方、宝玉や装飾品のような「財産」はほぼ手を加えることはありません。このイメージを「人」に置き換えて考えますと、「人材」は人の持つ可能性を加工して成長させるイメージになり、「人財」はあるがままの素材を活かすイメージになります。もちろん「人材」には、本人の意向と会社の意向にギャップのある加工が生まれるリスクがあり、「人財」には素材自体が辺鄙であったり自己主張が強すぎると業務に活かせないリスクがあります。

まとめ

「人材」と「人財」の違いは、会社視点での人の取扱いの意識差になります。世論では「人財」>「人材」という傾向が見られますが、この流れに従って「人材」を「人財」と言い改める必要はありません。人事戦略上必要なのが「人材」なのか「人財」なのかという観点が重要です。

「じんざい」でよい。
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コンサル白書
現役の経営コンサルタント(中小企業診断士)として2010年に独立しました。診断士試験は、独学でE判定から1週間で合格しました。
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